産後はなぜ自律神経が乱れるのか?
産後の自律神経の乱れ、その主な原因として挙げられるのは次の3点です。女性ホルモンのバランスが変化
妊娠、出産、授乳期間中にはそれぞれ女性ホルモンのバランスが大きく変動します。妊娠中は子宮内膜を柔らかくするプロゲステロン、胎児を育て乳腺を発達させるエストロゲンが増加。出産に際しては子宮口を柔らかくするプロスタグランジン、鎮痛作用や多幸感をもたらすオキシトシン、βエンドルフィンなども分泌されます。出産後はプロスタグランジンとエストロゲンの分泌が急速に減少し、母乳を噴出させ子宮を収縮させるオキシトシンの分泌が増えます。こうした女性ホルモンの急激な増減が、自律神経の乱れにつながることがあります。体型の変化や育児によるストレス
出産後に体型が変わったことや、育児に対応して生活を変えなければならないことなどの問題に直面してストレスを抱えてしまう人は少なくありません。子供が生まれて責任感が増し、プレッシャーや不安を感じる人もいるでしょう。こうしたストレスも自律神経を乱す大きな要因となります。育児が招く不規則な生活
出産後数ヶ月は赤ちゃんが生活の中心になります。定期的な授乳、おむつの取り替え、夜泣きへの対応や寝かしつけなどで生活ペースは乱れ、睡眠時間も削られます。規則的な生活を送ることが難しく、自律神経が乱れやすい状態が続いてしまいます。産後に自律神経が乱れることで招くリスク
産後、自律神経が乱れると、人によっては次のような状態に陥ることがあります。あくまで可能性ですが、自律神経の乱れが招くリスクとして覚えておきましょう。産後鬱
女性ホルモンの急激な増減や自律神経の乱れは、ときとしてマタニティーブルーと呼ばれるような状態をもたらします。イライラや不安が募り、何となく憂鬱になったり、はっきりした理由がないのに涙が出たりすることもあります。こういった症状が長期化したり悪化したりすると、産後鬱と診断されることもあります。もともと真面目で几帳面な性格の人ほど育児や家事に責任感を感じ、症状が深刻化しやすいとも言われます。頭痛やめまい
産後に頭痛やめまいが頻繁に起きるようになったという場合も、自律神経が関係している可能性があります。だるさ
慢性的なだるさや倦怠感も、自律神経が上手く働かなくなったときによく見られる症状です。カラダがだるくて動けず、育児や家事に支障が出てしまうと、罪悪感がさらにストレスを生むケースも見られます。食欲不振
産後は自律神経の乱れによって、食べたい気持ちはあるのに食事が進まない、あるいは食べたいという気持ちも起きない、といった食欲不振も起こりがちです。不眠
睡眠も自律神経と深く関わっています。産後は自律神経の乱れだけでなく、夜泣きや夜間の授乳を頻繁に行うため、快適な睡眠のリズムを作るのが難しくなることもあります。肩こり・腰痛
自律神経は血管の周囲を取り囲むようにあるため、乱れが生じると血管を収縮させて、血行不良を招くことがあるとされています。この血行不良が、肩こりや腰痛の引き金になってしまう可能性があります。産後の自律神経の乱れを整えて回復させる方法
では、産後の自律神経の乱れはどのようにして整えていけば良いのでしょうか。いくつかのケア方法を紹介しましょう。緊張や疲れを感じたら深呼吸
ゆっくりと深呼吸をすると緊張が解け、気持ちが落ち着くものです。これは深い呼吸が自律神経を整えるのに役立つためだと考えられます。疲れやだるさを感じたときも深呼吸を試してみましょう。とりわけ腹式呼吸は副交感神経の働きを高めて、心身のリラックスを促すと言われています。朝~昼は日の光を浴びる
朝日や午前中の太陽光を浴びると体内時計がリセットされて目覚め、カラダのリズムが調整されます。また、人が夜に眠くなるのはメラトニンというホルモンの作用なのですが、このメラトニンはセロトニンというホルモンが原料となって分泌されます。そして、セロトニンは朝にしっかりと日を浴びることで分泌が促されます。朝は日の光を浴び、夜は室内を暗くするのが生活リズムを作る基本です。
パートナーや家族に協力してもらいできる限り規則正しい生活を送る
少しでも育児の大変さを回避するには夫や家族など周囲の協力が欠かせません。1人で抱え込まずに相談し、できるだけ規則正しい生活ができるよう環境を整えましょう。適度な運動をする
適度な運動はカラダのリズムを整え、気分をリフレッシュさせてくれます。食欲を刺激し、セロトニンの分泌で不眠ケアにも役立ちます。産後はあまり激しい運動はできないので、ストレッチや自宅でできるトレーニングでカラダを動かしましょう。栄養のある食事をとる
食事は3食とるのが基本です。食欲があまりないという人はバナナやヨーグルトでも良いので朝食をとることから始めましょう。胃腸が活動して自律神経が正しく働き出すきっかけになります。ロれが抗酸化作用のあるビタミンC(パプリカ、パセリ、キウイフルーツなど)、神経の働きを正常に保つ働きのあるビタミンB群(穀類、うなぎ、レバー、納豆、肉、魚など)を摂取するのもおすすめです。
入浴するなどリラックスする時間を作る
入浴は副交感神経を優位にして心身をリラックスさせます。少しの時間、赤ちゃんの面倒はパートナーなどに見てもらって、ゆっくりお風呂に入る時間を作ってください。骨盤矯正の施術を受ける
骨盤矯正によって姿勢が矯正されることで自律神経に良い影響がもたらされることがあります。産後、骨盤の歪みを正し、本来の位置に戻すことで自律神経の乱れにも対処できる可能性があります。自律神経を整えるストレッチ
最後に、自律神経を整えることに役立つストレッチも紹介しましょう。首、肩のストレッチ
- 椅子に浅く座って背筋を伸ばし、胸を張ります。
- 頭の後ろで手を組み、両肘を外に開きます。
- 鼻から空気を吸い込みます。
- 姿勢を保ち、両肘を閉じながら、鼻から吸い込んだ空気を口からゆっくりと吐きます。同時に頭を前に倒して首の後ろの筋肉全体を伸ばします。
- 首の後ろの筋肉全体の伸びを感じたら、そのまま30秒キープします。
- これを3回繰り返します。
縮こまっている首側のストレッチ
縮こまっている側のこみかめあたりに反対側の手をあてて伸ばし、30秒キープします。
産後の自律神経の乱れはめずらしいことではありません。自分だけではないと知るだけでも気持ちが少し楽になるはずです。あせらず、なるべく心に余裕を持って、少しずつ整えていきましょう。